多発していた苗の受注トラブルを、データ共有と業務フロー見直しで解決


〜新おたる農業協同組合様の事例〜

◆アナログの受注管理でトラブルが多発

 新おたる農業協同組合様では、毎年早春から12棟の大型ビニールハウスで苗の育苗を行い、約200件の農家へ出荷しています。

これまでは、農家からの苗注文を、さまざまな部署の職員が受け付け、受信したFAXをそのまま転送したり、電話から手書きの注文書を書き起こし育苗部署に渡していたため、連絡ミス・伝達ミスなどのトラブルが多発し、納品遅延や賠償問題が生じる事故まで発生していました。

 また、育苗部署のベテラン職員が育苗の実務に追われて事務作業に手が回らず、注文の状況と育苗計画を頭の中で把握してはいるものの、他の職員では状況を正確に確認できないという属人的な業務状況が発生していました。

 こうした課題のご相談を受け、ITCさっぽろ(当時:ITC札幌有限責任事業組合)では、業務全体の流れを可視化し、受注から出荷までの情報を共有できる体制づくりに取り組みました。

 


 ◆スピーディーな提案と導入で業務改善を実現

  ご相談をいただいたのは、翌春の受注シーズン直前という厳しいタイミングでした。
 当初、農協様では「次のシーズンからの本格システム導入」を想定されていましたが、ITCさっぽろのコンサルタントがヒアリングを進める中で、「受注から出荷までのスケジュールに合わせ、部分的な業務改善を段階的に進めることで、今シーズンから効果を出せる」と判断し、新しい業務フローを即時に導入することを提案しました。
 職員の皆様が操作に慣れている Excelを活用した新たな業務フローを提示し、その案が採用され、既に受注が始まっていたこのシーズンから業務改善を進めることになりました。

 受注業務の業務改善点としては、各部署の職員が直接受けた電話を手書きし育苗現場に渡していた受注の窓口を一元化し、受注直後にデータ入力することと入力データのチェックの徹底を行い、最新の受注データを育苗の現場と共有するように変更しました。また、全て手書きに頼っていた育苗現場での播種から出荷までの業務を共有している受注データを利用し、日々の育苗指示や出荷の納品書などもEXCELから出力した帳票で行うようにしました。

 結果として、注文から出荷までのデータの転記作業や手書きや口頭での作業指示による受注ミス・伝達ミスなどが大幅に減少し、受注業務の流れが格段にスムーズになりました。

 ◆現場が使いやすい仕組みに

Excelで作った受注入力画面
※Excelで作成した受注入力画面の例

 業務改善を提案する際にITCさっぽろのコンサルタントが重視したのは、「業務改善を行う際に、現場の職員が納得して新業務に取り組むことができること」です。
 現場の職員たちにとって仕事のやり方が大きく変わることによる負担を少なくするため、業務改善ツールとしては、皆が使い慣れているEXCELを活用することとし、事前に、EXCELで作成した受注入力画面を実際に試用してもらうことで、操作の容易さとデータ共有の効果を実感してもらった上で、スムーズに改善した新しい業務手順への移行を進めることができました。

 

 

 ◆データの共有・可視化で業務が変わる

  受注情報をデータ化・可視化したことで担当者の負担が軽減され、育苗現場の職員が苗の管理、温度管理などの「本業」に集中できる環境が整いました。また、「今年はあの農家さんからの注文がまだ来ていない」「出荷時期が来ているのに苗の引き取りが済んでいない」等の状況も、直接の担当者以外でも把握しやすくなり、出荷漏れや確認遅れなどのトラブルを事前に防止できるようになりました。

 アナログで管理していた受注情報をデータ化・可視化することで、属人的だった業務を組織全体で共有・引き継げる体制に変わりました。その結果、事務作業の効率化やトラブルの未然防止、さらにはデータ分析に基づく経営判断も可能となり、継続的な業務改善の基盤が整いました。 

 ◆関係者の声

 ・斉藤管理部長様(導入当時:営農経済部長)

「属人的なノウハウから脱却し、若い職員に業務を引き継げる仕組みを作れたのは大きな成果です。」

 

・菱沼営農経済部長様

「受注・育苗実績をデータで把握できるようになり、短期・長期の計画作成に大いに役立っています。」

 

・ITCさっぽろの本件担当 ITコーディネータ 久蔵 宏幸

「仕事のやり方が急に変わることには、誰しも抵抗があるものです。今回は、使い慣れたExcelを活用し、すぐに効果を実感できる仕組みをご提案しました。管理者や担当者の皆さまにご理解とご協力をいただけたことで、スムーズに改善を進めることができました。実業務を続けながら段階的に進めた改善ですので、今後も現場に寄り添いながら、さらなる提案を重ねていきたいと考えています。」

 

 

 今回の取り組みでは、短い準備期間と多忙な業務の中にあっても、農協様の管理者・担当者の皆さまが強い改善意欲を持ち、提案に積極的にご協力くださったことが、成果につながる大きな要因となりました。
 アナログ管理からの脱却とデータ共有による業務の効率化・正確性の両立を実現できたのは、まさに現場と一体となった取り組みの成果です。
 ITCさっぽろでは、今後も現場の声に寄り添いながら課題をともに整理し、無理なく実行できる「実践的な仕組みづくり」を通じて、地域の組織や企業の発展を支援してまいります。


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